ペインクリニック内科

ペインクリニック内科

診療科部長挨拶

診療科部長:小山 伸一
当院ペインクリニック外来は2010年7月に開設、2012年4月より日本ペインクリニック学会指定研修施設としての認定を受けています。薬物療法と神経ブロック療法を中心に、漢方、リハビリテーション、心理療法などの要素も取り入れた集学的治療を行っております。

診療科の特徴


痛みには体の異常状態を警告するという大切な働きがありますが、非常に苦痛なものでもあります。特に長期間持続する痛みは、単に苦痛であるにとどまらず、心理面へも影響を及ぼし、生活の質を著しく低下させる原因になります。
ペインクリニックは、「警告」としての必要性を超えるような痛みを緩和するための診療科です。また、単に疼痛の緩和のみではなく、より良い日常生活を取り戻して頂けることこそが、ペインクリニックの最終目的であると考えます。

ペインクリニック外来
 
午前 小山
(予約制)
小山
(予約制)
  受付時間 診察時間
午前 8:00~11:30 9:00~12:00

当科は予約制外来ですが、予約なしでも診療可能です。
初診時には、現在服用されているお薬の内容がわかる資料をご持参下さい(お薬手帳など)。また最近血液検査を受けられた場合、その結果をご持参下さい。
可能であれば、現在診療を受けておられる医療機関からの紹介状をご持参下さい。

医師紹介

小山 伸一


出身大学
大阪市立大学
認定医・専門医等
日本麻酔科学会 麻酔科指導医、日本ペインクリニック学会 ペインクリニック専門医
専門
麻酔科一般、ペインクリニック
メッセージ
慢性疼痛で困っておられる患者さんの疼痛緩和はもちろんですが、心理的な苦痛にも配慮し、疼痛に対する付き合い方を共に寄り添って考え、より良い日常生活を取り戻して頂くことを目標として、日々診療を行っております。

ペインクリニックの対象となる主な病気について

ペインクリニックでの治療対象は、例えば以下のような病気が代表例ですが、これ以外にも様々な疼痛の治療を行います。


帯状疱疹関連痛(急性帯状疱疹痛、帯状疱疹後神経痛)
頚椎症、頸椎椎間板ヘルニアなどの頚椎疾患
腰椎椎間板ヘルニア腰部脊柱管狭窄症、変形性腰椎症などの腰椎疾患
片頭痛、緊張型頭痛などの機能性頭痛
三叉神経痛、非定型顔面痛、舌痛症など、顔面領域の神経痛
遷延性術後痛症候群(手術後の痛みがとれない)
複合性局所疼痛症候群(CRPS)、その他の末梢神経損傷後の疼痛
線維筋痛症症候群
糖尿病性神経障害、血管障害に伴う痛み、がん性疼痛、各部の関節痛、など

また痛み以外にも、アレルギー性鼻炎、顔面神経麻痺、自律神経失調症、突発性難聴、顔面けいれん、などに対する神経ブロック療法も行っております。専門診療科での治療効果が不十分な場合、併用療法としてご検討頂いてもよいかと考えます。

当院での診療実績が多い病気と、その治療方針について


1. 帯状疱疹関連痛(急性帯状疱疹痛、帯状疱疹後神経痛)
 帯状疱疹の痛みには個人差がありますが、極めて強い場合も多々あります(人生で体験する痛みのうち最大級のものの一つ、とされています)。痛みの持続期間も個人差が大きく、数か月~数年と長期間にわたって痛みが残存するものも珍しくありません。
治療の目的は、痛みの持続期間をなるべく短縮することにあり、そのために神経ブロック療法を行います(特に病初期には、積極的な施行をお勧めしております)。また強い痛みを放置することは、単に苦痛であるだけでなく、神経系へ悪影響をおよぼし、痛みを長期化させる一因となるため、薬物療法による積極的な痛み止めを行います。
薬物療法による鎮痛が不十分であり、何らかの苦痛を自覚しておられる方には、ペインクリニックでの治療が望ましいと考えます。特に、以下に該当する場合には、なるべく早期から神経ブロック療法を含む集中的な治療を強くお勧めします。

・痛みのため、睡眠や日常生活に何らかの影響が及んでいる方
・発症初期の皮膚の発疹が重症であった方
・顔面領域の帯状疱疹の方

2. 頚椎症、頸椎椎間板ヘルニア
 これらによる上肢、肩、首の痛みは耐え難いものがあります。頸椎の場合は通常、痛みのみでは手術適応とならず、薬物療法により症状の改善を図ることになりますが、それだけでは疼痛コントロールが不十分な方も多々お見受けします。
これらの病気に対しては、原因病変と症状に応じて、頚部硬膜外ブロック、頚部神経根ブロック、星状神経節ブロック、頸神経叢ブロックなどの神経ブロック療法と、薬物療法により治療を行います。
特に、頸椎疾患によって痛み、しびれが肩や手に放散する場合(神経根症)には、神経ブロック療法が著効する傾向にあります。このような痛みでお悩みの場合には、是非ご相談ください。

3. 腰椎椎間板ヘルニア
 腰椎椎間板ヘルニアは自然軽快例が多いため、痛みの強い時期をどのように乗り切るか、というところがポイントとなります。一般的な鎮痛薬のみで対応できる方が多数を占め、一部の重症な方は早期の手術療法を選択されます。
ペインクリニックでは、薬物による治療では十分な効果がないが、手術にはちょっと抵抗がある、という方に、神経ブロック療法(腰部硬膜外ブロック、腰部神経根ブロックなど)を用いた治療を行います。

4. 腰部脊柱管狭窄症
 腰痛以外に、下肢の痛みにより長時間の歩行ができない(間欠跛行)、下肢の一部が痛む(神経根症状)、あるいはこの両方を主症状とする病気です。こちらも軽症の場合は薬物のみでの治療、重症の場合には手術、となるのが一般的ですが、薬物療法では十分ではないが手術までは...という場合に、神経ブロック療法を併用します。特に、下肢への痛みを主症状とするタイプ(神経根型)では、神経ブロック療法の効果が比較的高い傾向にあります。
 また腰部脊柱管狭窄症の場合、発症直後は手術を推奨されず、しばらく薬物療法での経過観察となることも多いため、その期間の治療としてご検討いただいても良いと考えます。
5. 機能性頭痛
 片頭痛、緊張型頭痛でお悩みの方のうち、発作回数が多く、鎮痛薬を1か月に10回以上使用されるような場合、何らかの専門治療を受けられることをお勧め致します。
当科では発作予防のための薬物療法と、必要に応じて神経ブロック療法(星状神経節ブロック、後頭神経ブロック、トリガーポイント注射など)を併用して治療を行います。

6. 三叉神経痛
 典型的には、顔面の特定の位置を刺激した際に、一瞬だけ異常に強い痛みが走る、という病気です。電気が流れるような、ビリっとした感覚が一般的です。
まれに脳腫瘍などの病気が原因となっていることがあるため、MRIによる頭部の検査を行った後、薬物療法と神経ブロック療法(各種の三叉神経ブロック)による治療を行います。

ペインクリニックでは、どのような治療を行うのか?
当科の診療は、主に神経ブロック療法と薬物療法の併用となりますが、必要に応じ、あるいはご希望に応じ、どちらか一方のみで行うこともあります。

1. 神経ブロック療法
 神経ブロック療法は、主に注射により、目的とする神経周囲に薬物を投与する治療法です。痛みの原因となっている、過敏になった神経の働きを抑えることにより、疼痛を緩和します。また自律神経の一種である交感神経の働きを抑えることにより、疼痛部位の緊張緩和、血流改善を通じて、間接的に疼痛の緩和を図ることもあります。
当院では超音波診断装置、エックス線透視装置などを、必要に応じて用い、安全に配慮しながら行っております。

2. 薬物療法
 ペインクリニック=注射、とイメージされる方も多いのですが、内服薬を用いた治療も行います。ペインクリニックの対象患者さんの痛みの原因は多種多様で、一般的な痛み止めが無効であることも多いため、その方に合った薬物を見つける必要があります。当科では、いわゆる鎮痛薬以外にも、鎮痛補助薬と呼ばれる各種薬物、漢方薬などによって治療します。

3. リハビリテーション、理学療法
 痛みのため体の一部が十分に動かせない場合、関節の拘縮を生じ、それが原因でさらに痛みが増強する、という悪循環におちいる場合があります。このような状態を防ぐため、必要に応じてこれらを併用することもあります。

4. 認知行動療法
 「痛み」という感覚は心理的な影響を受けやすいため、強い痛みが長期間続くことにより、心理的なダメージを受け、そのことがさらに痛みを増強する、という悪循環におちいりやすい傾向があります。当科では、認知行動療法などの心理的アプローチを日常診療に取り入れ、患者さんのより良い日常を回復する一助となるよう心掛けております。

当科での診療実績(2022年)

総診療件数1205名(うち初診59名、入院1名)
<主な神経ブロック件数>
腰部硬膜外ブロック : 110件
胸部硬膜外ブロック :  20件
仙骨部硬膜外ブロック: 14件
頚部・腰部神経根ブロック :  22件
星状神経節ブロック : 158件
腕神経叢ブロック :   14件
頸神経叢ブロック :  124件
肋間神経ブロック :   16件
仙腸関節枝神経ブロック: 37件
椎間関節ブロック、脊椎神経後枝内側枝ブロック: 76件
三叉神経ブロック(末梢枝含む): 10件
その他の各種末梢神経ブロック : 46件
トリガーポイント注射、筋膜リリース注射 : 351件